何が起きたか
日本時間8月11日の未明、Anthropicが公式の研究ページで、未公開の研究版Claudeにリーマン予想(1859年から未解決で、100万ドルの懸賞金がかかっている数学の難問)へ挑ませた記録を公開しました。
結果から書きます。リーマン予想は解けていません。 発表の冒頭でAnthropic自身がそう書いています。
ただし、挑戦している途中で別の場所が動きました。リーマンゼータ関数の零点のうち仮説を満たすものの割合について、これまで数十年かけて積み上げられてきた下限が41.6%から67.2%に更新された、というのが今回の中身です。
確認の体制も公開されています。Anthropicの数学者2名(Levent AlpögeさんとRalph Furmanさん)が内容を検証し、この分野の外部専門家であるBrian ConreyさんとDan Goldstonさんも短い期間で論文を精査。さらにLeanという言語で形式的に検証できる証明が作られ、標準の検証ツールを通っています。
そのうえでAnthropicは「この手法がリーマン予想の証明につながるとは考えていない」と明記しています。ここは記事の見出しから落ちやすいところなので、そのまま置いておきます。
進め方も具体的に書かれていました。指示したのは数学者ではない社員の方で、内容の判断はモデルに任せたそうです。最初にClaudeが出した650個のアイデアは全部だめ。「もう一度」と促されたあと、約60個のサブエージェントを1日半かけて動かし、2,400のシェルコマンドと数百のPythonスクリプトを書いて到達した、とあります。人間側の入力は「続けて」「自分を信じて」といった励ましがほとんどだったとも書かれています。
生活で何が変わるか
正直に言えば、今日の献立や家計には何も変わりません。素数の分布の話です。
そのうえで、持ち帰れるものが2つあると思っています。
1つ目は、ニュースの読み方です。 この手の話はSNSだと「AIがついに数学の難問を解いた」という形で流れてきます。でも一次ソースは、最初の段落で「解けなかった」と書き、最後のほうで「この手法では証明につながらないと考えている」とまで書いている。発表した側が自分から限界を書いているときは、その通りに読むのがいちばん早いです。AIの話は特に、発表元のページを開くだけで印象がかなり変わります。
2つ目は、使い方のほうです。 650個外したあとの「もう一度」で流れが変わった、という部分。1回で欲しいものが出てこないと、つい質問文を練り直したくなりますが、その前に同じ依頼のまま「もう一回やってみて」と言い直すだけで別のルートに入ることがあります。これは献立を考えてもらうときも、学校のプリントの下書きを作ってもらうときも同じです。
マスターの一言
数学の中身は自分には検証できません。ここに書いた数字はAnthropicの公式ページにある記述を訳したもので、正しさを自分で保証できるものではない、と正直に置いておきます。
読んでいて手が止まったのは、検証のさせ方のほうでした。Claudeが自分でサブエージェントに反例を探させ、arXivから54本の論文を落として「すでに誰かが出していないか」を確かめ、ゼロから証明をやり直させている。そのうえで、人間の数論の専門家に検証してもらうよう自分から勧めた、とあります。
自分の出したものは自分に疑わせて、最後は人が見る。規模はまるで違いますが、この形は家でAIに何か任せるときにもそのまま真似できます。うちでも生成した文章はいったん別のところで見直させてから使うようにしていて、この順番は変えないでおこうと思いました。
出典: Learning more about Claude's mathematical capabilities(Anthropic公式研究ページ)
