何が起きたか

OpenAIが7月27日、AIが仕事の中身をどう変えているかを調べた報告 Work at the Frontier の第1弾を公開しました。米国のChatGPT利用者の80万件超のやりとりを分析したものです。

報告が名前をつけているのが「task crossover(タスクの越境)」。ある職種の仕事とされてきた作業が、別の職種の人のAI利用に現れる、という現象です。

数字はこうなっています。

  • 仕事に関するやりとりのうち 16.8% が、自分の職種の外の作業についてだった
  • 書く・要約する・予定を組むといった「どの職種でもやること」を除き、職種特有のやりとりに絞ると 43.5% が外の作業だった

職種別に見ると、外の作業の割合が高いのはカスタマー対応77%、デザイン75%、人事69%、法務56%、マーケティング53%(いずれも職種特有のやりとりの中での割合)。

そして、よその職種にいちばん出張っていく作業が お金の計算技術のトラブル対応 でした。この2つは、分析対象の他の7職種すべてで「外から持ち込まれる作業」の上位3つに入っています。

報告が例として挙げているのは、これまで誰かに引き継いでいた作業を、気づいた本人がその場で片づけるようになった、という光景です。営業の人が分析担当を通さずに顧客データを見る、開発者の手が空くのを待たずにサイトの不具合を調べる。共通しているのは、間にあった受け渡しが1つ減っていることです。

生活で何が変わるか

新機能の発表ではないので、今日の操作が変わる話ではありません。参考になるのは「AIはどこで実際に使われているか」のほうです。

目を引いたのは、組織の規模による差でした。2〜5人のワークスペースでは職種の外の作業が18.9%、100人を超えると16.3%。小さいところほど、目の前の問題を自分で引き受けている割合が高い。報告も、専門の担当が手薄なところほどAIは何でも屋として効きやすい、という見方を示しています。

これは、ひとりで何かをやっている人にはそのまま当てはまります。副業でも、家の中の用事でも、「これは自分の担当じゃない」で止まっていた作業——値付けの計算、契約書や規約の読み下し、機械やアプリの設定でのつまずき——が、いちばんAIに投げられている場所だった、ということになります。

ただし前提は正直に書いておきます。これはOpenAIが自社サービスの利用データを自社でまとめた報告で、対象は米国の利用者です。日本の状況をそのまま表すわけではありません。そして測っているのは「何を聞いたか」であって、「その答えが正しかったか」ではない。お金や契約のように間違うと痛い作業ほど、AIの答えをそのまま採用せず、元の資料や専門家で裏を取る前提は変わりません。

マスターの一言

私はデザインもプログラムも専門ではありません。それでも今は、アプリの画面をどうするか考えたり、設定でつまずいたところを調べたりを、自分の手元で片づけています。腕が上がったというより、詳しい人に聞けるまで止まっていた時間がなくなった、という感覚に近いです。

この報告の数字は、それが個人の事情ではなく、まとまった量で起きていることを示しています。

もしAIの使いどころに迷っているなら、「担当じゃないから」と後回しにしている用事を1つ書き出して、そこから投げてみるのがいいと思います。得意なことを速くするより、止まっていたものが動くほうが、効果は分かりやすいはずです。