何ができるのか
ChatGPTやClaudeを使ってきた人がGeminiも試すとき、引っかかるのは積み上げた会話が向こうに置き去りになることだ。それを移す手順がGoogleのヘルプにある。移せるのは2種類。
ひとつはメモリー。相手のAIが覚えているあなたの好みや前提のことだ。Gemini側が出してくれるプロンプトをコピーして、いま使っているAIに貼り付ける。返ってきた要約をコピーしてGeminiに貼り、[記憶を追加]を押す。ファイルのやりとりは要らない。
もうひとつはチャット履歴。こちらはファイルを使う。ChatGPTなら[設定]→[データ コントロール]→[エクスポートする]→[エクスポートを確認]。Claudeなら[設定]→[プライバシー]→[データのエクスポート]で、範囲を選んで[エクスポート]。どちらも申し込むとダウンロード用のリンクがメールで届く。この待ち時間が最長で1日かかることがある、と書かれている。届いたZIP(圧縮ファイル)をGeminiにアップロードすると取り込まれる。上限は5GB、1日に上げられるのは5個まで。
取り込んだ会話には専用のアイコンがつくので元のチャットと混ざらない。1件ずつも、ZIP単位でも消せる。
これは今週の新機能ではない。Internet Archiveに残る2026年3月末の保存版でも、条件と手順の書き方はいまとほぼ同じだった。前からあるのに知られていない機能だと思う。
使うための条件
ヘルプには条件が3つ並んでいる。個人のGoogleアカウントであること(仕事用・学校用・管理対象では使えない)、移す元のAIにアクセスできること、18歳以上であること。
使えない場所も名指しされている。欧州経済領域・スイス・英国と、Gemini in Google メッセージ、Gemini in Chrome、Gemini on Android XR。日本はこの中に入っていない。
ただし、日本ならもう使えると読むのは早い。商品ページの脚注に4つ目の条件があって、Geminiのパーソナライズ機能を有効にする必要がある、と書かれている。その機能のヘルプを見ると、段階的に提供していてまだ使えない場合がある、とある。設定に項目が見当たらなければ、自分の番がまだ来ていないのだと思う。
入口にも注意がいる。このヘルプにはパソコン・Android・iPhoneとiPadの3つのタブがあるが、3つとも中身が同じで、どれも gemini.google.com を開くところから始まる。スマホのGeminiアプリの中を探す案内は出てこない。スマホならブラウザで開く。
日本語版ヘルプでは、同じメニューが[Gemini にメモをインポート]と[メモリーを Gemini にインポート]の2通りに訳されている。英語版はどちらも同じ表記なので訳のゆれだ。設定とヘルプの中のインポートの項目、と覚えておけばいい。
移らないものと、データの扱い
商品ページによると、移るのはチャットのテキストだけだ。向こうで生成した画像やファイル、プロジェクトのファイルや添付ファイルは取り込めない。
もうひとつヘルプにはっきり書かれている。取り込んだ会話と、その続きで交わした会話はアクティビティ(Googleに残る利用履歴)に保存され、生成AIモデルのトレーニングを含むサービスの改善に使われる。アクティビティはいつでも管理・削除できるともある。込み入った仕事の話や家族の事情が入った履歴を丸ごと上げるかは、ここを読んでから決めたい。
生活で何が変わるか
AIを乗り換えるときの本当の面倒は、機能を覚え直すことではなく、自分の前提を一から説明し直すことだ。うちは主夫なので、家族の人数、アレルギー、買い物に行ける曜日を毎回説明する。メモリーだけでも移せれば、その説明のやり直しが省ける。
重い履歴を運ばなくても、メモリーの移行はコピーと貼り付けの往復で終わる。エクスポートの申し込みもメール待ちも要らない。
マスターの一言
この手の引っ越しツールは出す側に得がある機能なので、話半分で見るくらいがちょうどいい。それでも使えない国や対象外のアカウント、データの使われ方まで書いてあるのは親切なほうだ。
個人的には、履歴を丸ごと移すより、メモリーだけ移して両方を並行して使うのが現実的だと思う。乗り換えを決めてから移すのではなく、比べるために移す。
