何が起きたか
OpenAIが8月6日、アメリカ心理学会(APA)と組むと発表しました。APAはアメリカの心理学の学術・専門職団体です。目的は、若い人のAI利用に心理学の知見を入れること。何が分かっていて、何がまだ分かっていないのか、責任あるAIとはどういう形かを、発達心理と臨床の側から整理する、という説明です。
発表で挙げられている柱は3つです。
1. 保護者・養育者を支える
最初に取りかかるのがここだと書かれています。家庭でAIをどう扱うかの実用的な資料を作る。中身として挙がっているのは、健全な使い方を支えること、大人が入ったほうがいい場面を見分けること、そしてAIは人やケアの代わりではないと伝え直すこと。この資料は学校のコミュニティにも広く届けたい、としています。
2. 現場の専門家を支える
AIについて質問される機会が増えている臨床家やスクールカウンセラー向けの資料も予定されています。健全な使い方を促すこと、頼りすぎ(overreliance)に気づくこと、不健全な使い方に介入すること、が挙げられています。
3. 当事者の声を聞く
思い込みで進めないために、10代本人・家族・臨床家・スクールカウンセラーを集めて、実際にどう使われているか、学校や家庭でどんな相談が出ているかを聞く、と書かれています。
すでにやっていることとしては、260人を超えるメンタルヘルスの専門家との協働、相談窓口へのワンタップ導線、休憩をうながすリマインダー、保護者向けの管理機能、18歳未満に関する方針、年齢を推定する仕組みが挙げられています。
注意点
これは提携の発表で、新機能のリリースではありません。資料はこれから作る段階です。APAはアメリカの団体なので、成果物がそのまま日本語で降りてくるとも書かれていません。
生活で何が変わるか
今日設定を変える話ではないので、正直に言えばすぐ変わることはありません。それでも取り上げたのは、この発表の中に何度も出てくる一文が、資料を待たずに使えるからです。
「AIは、人やケアの代わりではなく、道具である」。
子どもがAIを使うことをどう扱うか。うちも含めて、たいていの家庭は「禁止するか、放っておくか」の二択になりがちだと思います。宿題に使わせていいのか、調べものならいいのか、線の引き方が分からないからです。
この発表の立て方は、そこに別の軸を置いています。何に使ったかではなく、人の代わりになっていないかを見る。同じ「AIに相談した」でも、調べものの相談と、誰にも言えないことの相談では、意味がまったく違います。後者が続いているなら、それは使い方の問題ではなく、まわりの大人に言えていないという話のはずです。
「頼りすぎに気づく」という言葉が、専門家向けの項目にわざわざ入っているのも同じ理由だと思います。使用時間の長さではなく、人に相談する代わりになっていないかを見ている。
マスターの一言
私の子どもはまだ自分でAIを使う年齢ではないので、これは実体験としては語れません。その前提で書きます。
このニュース自体は地味です。機能は出ていないし、アメリカの話だし、資料もまだありません。それでも読んでおく価値があると思ったのは、AIを家に入れる側の話だからです。
AIのニュースは「何ができるようになったか」ばかりで、「どう付き合うか」はあまり出てきません。私自身、仕事ではAIに任せる範囲を毎日広げていますが、それをそのまま子どもに当てはめていいとは思っていません。大人が効率のために使うのと、子どもが人に聞く代わりに使うのは、同じ道具でも別の話です。
だから今の時点で持ち帰れるのは、機能ではなく線引きの言葉のほうだと思います。AIは調べる相手であって、頼る相手ではない。それを親のほうが先に言葉にしておけば、実際に子どもが使い始めたときに、慌てて禁止しなくて済むはずです。資料が出たら、また読んで書きます。
